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「骨の量が足りない場合、インプラント治療はできないですか?」【後編】
今回も、前回に引き続きインプラントについて甲斐悦します。骨量が不足している際に用いる治療とは、一体どのような内容なのでしょうか。
1.骨量が不足している場合の処置
診査と診断によって歯槽骨の量や厚み、高さや幅が足りないとわかったら、次のいずれかの方法で治療を行います。
1-1.ショートインプラント
インプラントは通常、長さが10mm~18mmで直径が3mm~5mmです。そこで、骨量が足りない場合に用いるのが8mm未満である「ショートインプラント」です。
埋め込む部分が血管や神経に近い、あるいは骨の高さや厚みが不足している症例に適用できます。
治療のメリットは、次の3点です。
① 神経・血管・組織を避けられる
骨量などの問題によって治療が難しくなる理由の一つに、さまざまな器官との距離が挙げられます。下顎には太い血管や神経が巡っている「下歯槽管」、上顎には鼻のすぐ横に位置する「上顎洞」があり、骨量不足のまま治療するとこれらにダメージを与えるリスクが懸念されるのです。
ショートインプラントを用いることで、神経や血管、組織に傷がつくことを防げるでしょう。
② 外科手術が不要である
ほかの方法のように、外科手術を伴いません。治療期間や費用の問題を解消できるほか、心身の負担の軽減にもつながるでしょう。
③ 治療の選択肢が増える
これまでインプラントを断られた経験がある方も、この方法によって可能となる場合があります。
期間や費用の問題で「骨造成の手術を伴うなら諦めようかな」と思っていた方にも、適した方法といえるでしょう。
1-2.骨造成(GBR/骨再生誘導法)
骨量が不足している箇所へ、患者さまご自身の骨である「自家骨」や「人工骨」を配置したのち、上から人工膜(メンブレン)を被せて骨造成を促す方法です。
行うタイミングはさまざまで、主に
①まず骨造成をし、しばらく経ってインプラントを埋め込む
②骨造成とインプラントの埋め込みを同時に行う
といった2つのパターンがあります。歯槽骨の状態を観察しつつ、最適なタイミングを歯科医師が決定する流れとなります。
1-3.上顎洞底挙上術
サイナスリフトとソケットリフトの2つの方法がありますが、近年は世界的にも後者が広く普及しています。
① サイナスリフト
上顎洞底までの骨量に問題があるケースでは、骨を大きく造成しなければなりません。その際に、頬側の歯肉を切り開いて窓開け(露出した骨へ穴を開け、窓を設ける)し、そこから「シュナイダー膜」と呼ばれる上顎洞粘膜を持ち上げて隙間を作ります。そのスペースへ、インプラントを直接埋入するのです。
メリットは、外科手術を伴いながらも比較的安全に治療できる点です。これは執刀医が、自身の目で確認しながら処置できるためです。確実に骨造成を行えるといっても過言ではなく、特に骨が少ないケースに適しています。
② ソケットリフト
厚みが足りない場合によく用いられます。インプラントを埋め込むための穴を上の顎骨に設け、人工骨補填材を注入して専用の機器で上顎洞底を持ち上げます。半年弱で、骨造成が完了します。
なおこの方法は、術中に執刀医が目視確認できません。そのため、医療事故の可能性もゼロとはいえない難点を抱えています。
2.まずは歯科医院で術前検査を!
今回は、骨量が不足している場合の処置について詳しく紹介しました。専門用語が多く、理解しにくかった方もいらっしゃるかもしれません。
骨造成に興味をお持ちで、わからないことがある方は一度かかりつけ医に尋ねてみるとよいでしょう。きっと、詳しく説明したのち最適な提案をしてくれるはずです。
骨量不足を理由にインプラントを諦めていた方は、これを機に治療を検討してはいかがでしょうか。一度断られた方も、医療の進歩によって可能となっているかもしれません。
ただ今回の記事にあった通り、骨造成では外科手術を伴うことがあります。インプラントも同様です。
医療事故を起こさないためには、事前の診査・診断が非常に重要となります。この段階を怠ると、術中に血管や神経を傷つけかねません。
しばた歯科では、すべての患者さまに事前診査を受けていただきます。歯槽骨の状態や血管や神経の位置は患者さまによってわずかに異なりますので、その点を診査した上で治療計画を策定いたします。
少しでも早く治療を開始したい気持ちは山々だと思いますが、安全かつ確実な治療のためにご協力をお願いします。
なお当院の事前診査は、細部まできれいに撮影できる歯科用のCTスキャンを用いて行います。同時に噛み合わせの確認、歯科医師による診察も実施します。
骨量の問題で治療を断念しかけていた方や、これからインプラント治療を受けたいと思った方は、ぜひしばた歯科へお越しください。